最高裁判所第三小法廷 昭和54年(あ)1427号 決定 1980年7月04日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人大野正男、同大橋堅固、同山川洋一郎、同黒田寿男、同荒井金雄、同鈴木栄治郎、同飯田孝朗、同淵上貫之、同山上益郎、同金谷鞆弘の上告趣意第一点は、憲法三七条一項違反をいうが、記録によると、本件公訴提起から本上告趣意書提出に至るまで約一二年の年月を要しているとはいえ、それは、主として、事実認定及び法的評価に関し下級審と上級審との間で見解が分れたため、慎重な審理を尽す必要があったことによるものであると認められるから、所論は前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。
同第二点は、憲法二一条、三一条違反をいう点を含め、結局、原審が本件第一次上告審判決(最高裁昭和四六年(あ)第七二九号同五〇年一〇月二四日第二小法廷判決・刑集二九巻九号七七七頁)の見解に従ってした法律上の判断を論難する主張に帰するところ、下級裁判所が最高裁判所の破棄理由とした法律上の判断に従ってした判決に対しては、その法律上の判断を不服として上告することは許されないものと解するのが相当であるから(最高裁昭和二四年(れ)第二〇二九号同二五年一〇月二五日大法廷判決・刑集四巻一〇号二一三四頁、同昭和三七年(あ)第二三五四号同三九年一一月二四日第三小法廷決定・刑集一八巻九号六三九頁参照)、適法な上告理由にあたらない。
同第三点は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 伊藤正己 裁判官 環昌一 裁判官 横井大三 裁判官 寺田治郎)